【検証】ケトジェニックダイエットがまだ危険だと思ってる?【トレンド記事考察】

2020年6月13日

こんにちはぷっか博士です。今回は最近よく「危ない」と言われているケトジェニックダイエットについて検証してみます。科学者としての見地から、科学的に正しい情報を精査してまとめていきます。
僕の検証方法や検証能力についても紹介します(検証の価値に関わるので)。興味のない方は飛ばしてください。
また、危険かどうか結果だけが知りたい方は、いきなりまとめへどうぞ。

僕の検証法の妥当性

クエスチョンマーク

人間は証拠(エビデンス)よりも自分を信じてしまう

人間の思考には「確証バイアス※1」という癖があり、自分がすでに持つ考え方を補強するデータを意識もしくは無意識に選んでしまう[文献1]ということも明らかになっています。

人間、さらには科学者であれば自分の考え方は正しいと思いたいモノです。心理学的には人間は「自分の発言を最も信頼する」とさえ言われているそうです(元の研究論文は不明)。人間は根拠よりも自分を信じてしまう生き物なのです。これも一つの思考におけるバイアスですね。

さらに、科学者といえども、他分野(僕は物理と化学が専門です)についての検証方法は得意ではないものです。研究を進める上では経験がものを言う場面も多く、経験で人にモノを語る科学者が非常に多いです。

こういった問題があるため、科学者といえども、人間の癖に依存しないシステム化した考え方、考察方法、検証方法が必要です。

※1 バイアス・・・偏り、何かに対して偏った見方、考え方をしてしまうときに使う
[文献1] 池内了 (2008) 疑似科学入門 岩波書店

僕のできる科学的に正しい検証方法

基本的には記事に引用されている参考文献(研究者が書いた論文など)を元に判断します。その中で大事なのが、その論文がそもそも正しいのかということです。

心理・医学・生体系の臨床分野においてはとくに「Evidence-based Practice(エビデンスに基づいた実践)」という考え方が人間の持つバイアスを取り除いて検証するのに重視されています。僕の研究分野である物理や化学では直接使えない方法ではありますが、ダイエットや心理学を検証する上では必須の考え方です。この考え方のないダイエット記事は間違っているものも多いです。

僕は上記の本にあるような「Evidence-based Practice」や、大学での研究で学んでいる科学的考え方を元に今回の記事を書いています。簡単にまとめると、

正確性の高い(質の良いエビデンス)がある論文の情報を正しい情報とする。

記事の内容と論文に本当に因果関係が、論文は論理的に妥当かなどを精査する。

という考え方をしています。使用した文献(研究論文、本、など)は適宜示します。ただし、ほとんど一般的であったり、本ブログ記事の主とならない情報については詳しくは調べません。

「Evidence-based Practice」考え方については、詳しくはこちらの記事で紹介します。↓↓

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また、この考え方をまとめて解説してくれている本について簡単に要約してあります↓↓

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ケトジェニック(糖質制限)危険情報の考察

ここ最近話題になっていた記事は以下のものです。まずはこちらの記事の内容を紹介します。

糖質制限が寿命に影響する可能性(様々な記事、タイトルは記事によって異なる)
極端な糖質制限で死亡率が高まる(NHK あさイチ)

糖質制限が寿命に影響する可能性 の記事紹介

まず、JIJI.COM(時事通信社)や、朝日新聞DIGITALで紹介された記事などを元にまとめると

【結論】
糖質制限を長期間続けると老化が早まる可能性がある。
【内容】
①マウスに「標準食」「低糖質高脂肪」「低糖質高タンパク」の食事を与えた実験をした
②「低糖質高タンパク」の食事のマウスが寿命が2割短く、記憶力も半分程度だった
③「腸内で悪玉菌が増え、善玉菌が減少」し、これが老化の原因と推測
④人間でも糖質制限で腸内細菌のバランスが崩れることはすでに明らか
⑤短期間は問題ないが長期になると危険と、研究者が忠告した



というものでした。

記事の内容としては理にかなった内容ですし、研究内容を忠実に伝えていそうです。しかし、今回の記事で発表された内容であれば危険を回避してケトジェニックダイエットをすることは可能そうです。考察へどうぞ!

考察:ほとんど危険なし。ただしポイントあり!

そもそも論ですが、

【反論①】マウスはそもそもほぼ穀類を主食とする哺乳類なので高タンパク低糖質食で健康が害されるのは不思議ではない

つまり、低糖質が原因とは言い切れず、この結果は人間には当てはまらない可能性が高いです。

【反論②】糖質というよりは、おそらくタンパク質の大量摂取が原因。「低糖質高タンパク食」はそもそも脂肪を摂取していない。研究者本人も腸内の悪玉菌増加が問題としている

タンパク質は悪玉菌のエサになるので高タンパク質食が原因で寿命の低下につながったと考えられます。つまり善玉菌を維持できる食事法であればこの問題も解決です。

ケトジェニックダイエットでは、タンパク質よりも脂質を多めに取りますし、善玉菌を増やすために野菜やこんにゃくなどから食物繊維をしっかり取れば、今回の寿命への影響はなさそうです。(善玉は食物繊維をエサとする)

【補足①】今回の記事はおそらく都築准教授へのインタビューが元になっており、論文として「査読※2」後のデータでもないので、信頼性あまりは担保されていません。

ということで、この記事による糖質制限が寿命に影響するという記事は正確ではなく、正確には高タンパク質食がマウス実験においては寿命が短くなった。というのが正確だと思います。また、研究の確度も低いかなと思いました(質が悪いというわけではなく、確信できる情報がない)。

このあともう一記事紹介します。

※2 査読:論文の審査および精査をすること。研究論文は基本的に、その論文を載せる雑誌において、査読という審査を通らなければ掲載されない。

極端な糖質制限で死亡率が高まるという記事紹介

NHKのあさイチの放送では極端な糖質制限で死亡率が高まると言われていたようです。僕は放送自体は見ていないのであさイチのホームページにある情報を調べました。また、あさイチの内容について議論しているサイトも調べました[サイト2]。著作権の観点から内容の複製は認められていないので、得た情報をざっくりまとめると、

【結論】
糖質の摂取量が標準的な人と少ない人で比較すると死亡率が1.3倍
【内容】
①13万人の食生活について20年以上分のデータを集めて解析した
②健康のために40代女性では、一日で糖質220g以上摂取が目安(厚労省)
③糖質は甘いものではなくパンやご飯などから摂取すれば太りにくい

といった感じの内容だったようです。また、この記事の元となった論文[文献2]についてのうちのポイントをまとめると、(研究論文のまとめなので難しいです。めんどい方は考察へ!

【結論】
野菜ベースの低糖質ダイエットは動物ベースのダイエットより○○
【内容】
①この研究は「コホート研究」と言われる信頼度が中度の研究(※3)
②看護師や医療専門家の食事の自己申告と健康データを分析、人数は約13万人
③多変量解析を用いて年齢や身体活動、禁煙飲酒なども考慮、食事が変化する病気担った一は計算から除外した。
④死亡率が1.3倍になり、そのデータが統計的にギリギリ正しそうなのは死因が大腸ガンの場合のみ(統計におけるp値が0.048※4)
⑤肺がんリスクは糖質量とは関係ない(p値が0.003)
⑥ガン以外の死因および、全死因で統計処理すると、「通常の食事」のグループ、「動物性かつ低糖質食」のグループと「植物性かつ低糖質」のグループでは「植物性かつ低糖質」グループが最も死亡率が低かった(p値は高いものがおおかった)

研究データはなかなか面白かったです。一言でまとめると、糖質カンケイナイ。考察をどうぞ。

※3 コホート研究:研究のエビデンス(証拠)の強さは上から順に①メタ分析、②ランダム化比較実験、③コホート研究、④症例対照研究、⑤症例報告など、⑥動物実験などとされている。これ以外にも分類はある。“SUNY Downstate EBM Tutorial”. library.downstate.edu.より
他にも、①ランダム化比較実験のメタ分析、②ランダム化比較実験、③準実験、④観察研究[コホート研究、ケースコントロール研究]、⑤事例集積研究、⑥専門家の意見 とする著書もある。[心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス入門、原田隆之著、金剛出版]
※4 p値 統計処理を行った時に出る値の一つ、p値が小さいほど信頼性が高く、0.05を下回ると統計的に意味のあるデータとされる。

考察:動物性タンパク質の取り過ぎが死亡率上昇の原因!

さて、難しいことをつらつら書きましたが、この論文の主張は、動物性のものをたくさん食べ、かつ低糖質だと死亡率が増加し、植物性のものを食べ、低糖質の食事をしていると逆に死亡率は低下しました。

植物性のものをたくさん食べている人は健康に気を遣っていそうだから、その影響がありそう!という反論もありそうですが、上記③のように、飲酒喫煙、運動なども含めて解析している様なのでそういう理由ではなさそうです。

さらに、記事の主題の死亡率1.3倍!というのは、大腸ガンの話でしたが、そもそも、大腸ガンになるリスクはタンパク質の大量摂取による悪玉菌の増加が原因で、一つ目の記事で考察したとおり食物繊維を多くとれば問題ありません。

ただ,一つだけ注意!があります。今回の論文は、あくまで糖質制限者と非制限者の病気や死亡原因を追った研究になります。なので『糖質制限をしている人は健康志向の人が多く、結果的に病気になりにくかった』といった可能性もぬぐえません。

このように、世間のにあふれている情報をすぐうのみにせず、考えてみることが大切です。気になることがあればコメントに記入お願いします!

ということで、ここ最近の糖質制限ヤバい説は論破できました。ケトジェニックダイエットはポイントさえ守れば安全です。

ただし、必ず守るべきポイントがあります。こちらの記事にまとめていますので、今から始める方はご一読ください。↓↓

まとめ

ここまで読んで下さった方はお疲れ様でした。検証結果をまとめます。

各記事は、糖質制限が危険というタイトルだったが、その実は、糖質制限自体の影響は見られず、動物性タンパク質の摂取が多くなったことが原因で、マウスの寿命が減ったり、大腸ガンで死亡する確率が上昇していた。これは特に悪玉菌の増加が理由の可能性が高い。植物主体の食事であれば、糖質制限をしていても死亡率はむしろ下がった。

というのが、記事の元となった研究の本当の内容でした。
つまり、ケトジェニックダイエットをする際は、善玉菌のエサになる食物繊維を多く取る。かつ、野菜を多めに摂取し、タンパク質を取り過ぎないことが大切だと分かりました。

結論

ケトジェニックダイエットは正しく行えば安全!

ケトジェニックダイエットは、今や多くの人が実践しているダイエットとなりつつあります。他のダイエットよりも簡単に痩せられるケトジェニックダイエット。是非試してみてはいかがでしょうか。挑戦したい方は下の記事もどうぞ。読んでいただきありがとうございました。